syōka


よく旅をする。作品づくりのために旅に出ることも多く、それには神経を研ぎ澄まし集中して被写体と対峙する必要があるが、旅を重ねていると、些細な条件で感覚が鈍り視点が濁ることがあった。


そんな時こそ、いつもとは違う視点で撮ることができたらいいのに、結局自分が落ち着く構図や似たような被写体ばかりを切り取ってしまう。その時撮った写真には何が写っているのだろうか。そう思い、新しい旅の前に、感覚が鈍り濁った視点で撮った写真を「未消化」の旅として再構成することにした。


視点の濁りのせいで余計なものは削ぎ落とされ視覚対象が無色に見えるが、私にとって特別な色だけは見えている、そんな脳内の状態を再現した。


様々な旅を同じテンプレートに当てはめ、当時の視点や情景を反芻すると、旅の履歴を相対評価することができ、自分が得たものや変化したことが浮き彫りになっていく。


ある目的のために行っていると思っていた旅は、行為自体に意味があるということを知る。それをもって初めて「消化」することができ、また次の旅へと意識を向けることができるのだ。


2019.07

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